2016.05.01
日本は死因不明社会と言われます。
これから多死社会を迎え、医療事故調査制度との絡みでも、死因究明のニーズはますます高まることが指摘されています。
大分県内でも解剖を行っている医療機関がありますが、まだ体制が十分とはいえないと聞きます。
以前、参加した会合で伺ったことをまとめてみました。
死因を究明する解剖。
一言に「解剖」といっても様々な形態があります。
解剖は大別すると3種類。
○名称:解剖する人:目的
・系統解剖:医学生:医学の勉強
・病理解剖:病理医:医療の検証・医学の研究
・法医解剖:法医・監察医:死因の究明・犯罪捜査
さらに、その中でも細かく分類されています。
根拠となる法律や目的によって遺族同意の要否も異なってきます。
○名称:法律:目的:承諾:費用
・司法解剖:刑事訴訟法:鑑定:不要(令状):公費
・行政解剖:死体解剖保存法:監察医による死因調査:不要(知事):公費
・調査解剖:死因調査法:死因調査:不要(警察署長):公費
・承諾解剖:死体解剖保存不法:死因究明など:要(遺族):病院など
・病理解剖:死体解剖保存法:医療の検証など:要(遺族):病院など
いくつもの法律が絡み合って複雑な仕組みです。
大分県内でも珍しくない独居者の孤独死・孤立死などは「異状死体」に定義されます。
そのため警察官による検視、監察医による検案がなされます。
「異状死体」の概念とは。
医師法第21条 医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めた時は、24時間以内に所轄警察署へ届け出なければならない。
とありますが、異状の定義については法的な規定はありません。
1995年に日本法医学会が示した異状死ガイドラインでは
1、外因による死亡(診療の有無、診療の期間を問わない)
2、外因による障害の続発性、あるいは後遺障害による死亡
3、上記1、2の疑いのあるもの
4、診療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いのあるもの
5、死因が明らかでない死亡(死亡発見死体など) その範囲は示されています。
施設で亡くなった場合でも「在宅」の扱いになりますので、かかりつけの訪問医がいなければ警察が検視することもあります。
私たちにとっては月に何度も経験することなので特別なことではありません。
しかし、ただでさえご家族は大切な方をなくした悲しみ中、聞きなれない言葉、馴染みのない手続きばかりでパニックになります。
まずは安心していただくことを最優先に行動するように心がけています。
もし検視、検案を経た場合、大半は警察の安置場所にお迎えに行くことになります。
大分市内は大分中央署・南署・東署、別府では別府中央署に安置室があります。
国東警察署、佐伯警察署などにも専用の施設があります。
大分合同新聞の記事によると、大分県警の検視官室が一年間に検視した数は1300件で、年間死者数の約1割に当たるとのこと。
そして、その検視対象の4人に一人が一人暮らしのお年寄りなのだそうです。
こうした問題は警察だけでなく、医師会、自治体、民生委員、自治会、ご近所などコミュニティ全体で考えていく必要があるといわれます。
現場で直面する我々のような葬祭業者もできることを考えていきたいです。